2011年5月14日土曜日

オートノミーのボディは交換式だから、安全性さえ確保できれば、誰でも自由にカーデザインをできるようになるかもしれない。


「オートノミー」は、2020年頃に実現化するだろうといわれる自動車の新技術。2002年、開催されたデトロイト・モーターショーでGM社が披露した近未来カーだ。オートノミーをひと言で表現すると「巨大なスケートボード」という感じ。自動車になくてはならないエンジンルーム、ドライブシャフト、ステアリングやブレーキがない。これ以上ないシンプルな構造である。



















オートノミーのコンセプトを可能にしたのは「燃料電池」「ホイール・モーター」「ドライブ・バイ・ワイヤー」という3つの技術である。動力源は、水素と空気を使い、有害物質が出ない「燃料電池」。4つのタイヤはそれぞれモーターが内蔵された「ホイール・モーター」で走る。これは火星用探査自動車で使われている技術らしい。運転は、コントローラーとモーターを電子回路でつなぐ「ドライブ・バイ・ワイヤー」で行う。






























面白いのは、長さ4・5メートル、幅1・8メートルの板にタイヤをつけただけのシンプルなプラットフォームには、レゴ・ブロックのように簡単にボディを取り付けられることだ。その日の目的に合わせ、レジャービークルにでもスポーツカーにでもボディを自在に取り替えられる。そればかりか、ドライバーズシートをどこに置こうがまったく自由なのだ。
GM社のCEOリック・ワゴナーは、オートノミー・プロジェクトを「もし百年以上も前でなく、まさに今、自動車を発明しようと考えたら、一体どんなかたちになるか」を追求した結果だと言っている。まさにオートノミーは、自動車の「再発明」といえる。

オートノミーの登場で一番変わるのは、自動車のデザインだろう。いままで、カーデザイナーはさまざまな制約がある中で、カースタイリングや居住性を進化させてきた。それが、オートノミーではデザインを制約するものがほとんどなくなってしまうのである。しかし「デザインが自由である」ということは、発想を不自由にするものなのか。現時点で描かれているオートノミーの実験的なデザイン画には、あっと驚かせるような面白いものは見当たらない。理由は、全く条件の異なるオートノミーに、従来の車型を無理矢理に当てはめているに過ぎないからだ。「これがオートノミーだ!」というデザインになっていない。もっとも、デジカメでもそうだが、革新的な技術が登場しても、既成概念をなかなか打破できず、なんとなく旧来のかたちを踏襲してしまうものなのである。そういえば19世紀末に発明された自動車も、当初は馬車のかたちを引用していたのだった。

もっともオートノミーのボディは交換式だから、自動車の車種なんて限りなくできてしまうことになる。安全性さえ確保できれば、誰でも自由にカーデザインをできるようになるかもしれない。建築家に個人住宅のデザインを発注するように、プロダクトデザイナーに自家用車のデザインを依頼するようになるのだろうか。そうだとすると、今の東京の街並みのように、かっこいい建築と、どうでもいい建築とが無秩序に混在する状況になるだろう。



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